4森林組合の能力を踏まえ年間6万m3台の輸出量を安定化
南那珂森林組合が事務局をつとめている木材輸出戦略協議会の取り扱い実績をもう一度見直したい。2022年度に約7万5,000m3でピークに達した後は6万m3台が続いており、伸び悩んでいるようにも映る。木質バイオマス発電所向けの燃料材需要が増大した影響が出ているということだが。
燃料材などの売り先が増えたことで、輸出向けの丸太が以前のようには集まらなくなっている。一時は、年間10万m3の輸出量を目標に掲げたときもあったが、今の状況を考えると6万m3台で安定させることが重要になっている。
協議会としての輸出量は、傘下の4森林組合にどう割り当てているのか。
年度当初に年間の目標量を決め、各森林組合に振り分けている。ただし、機械的に4分の1ずつ割り当てるのではなく、各森林組合の取り扱い能力などに応じて配分している。当森林組合は全輸出量の半分近くを出荷している。
輸出先のニーズに合わせ5m材を増やす、スギの良さも浸透
輸出事業の詳しい内容について教えて欲しい。出荷している丸太の材長はどのくらいなのか。
基本は4mだが、最近は5mの大径木の出荷が増えている。輸出先では、5m材を現場ごとの状況に合わせて切り直しているようだ。この方が使い勝手がいいので、輸出量が伸びている。
価格の動きはどうなのか。
2013年度に中国向けの輸出を始めた頃は、中小径の曲がり材の価格はm3当たり約6,500円だった。それが今は1万2,000円を超えており、2倍近くになっている。
中国経済は減速しているといわれるが、影響は出ていないのか。
影響が出ていないわけではないが、日本からの丸太輸出量は、中国全体の消費量に照らすと数%にすぎない。中国側の“受け皿”はまだまだ広がる余地があるし、スギの良さも次第に浸透してきている。
>779endo01.jpg>大径丸太や中小径丸太をコンスタントに輸出している(画像提供:南那珂森林組合)
商社ごとに異なっていた単価を統一し、バラツキ問題を解消
輸出を仲介している商社との取引条件などはどうなっているのか。
輸出する港まで持ち込む「着値」の契約にしている。取引先の商社は複数あるが、協議会の総意として提案し、一昨年(2024年)4月から単価を統一していただいている。
そんな交渉もしているのか。
もともとは商社ごとに単価を取り決めていたが、バラツキがあった。また、丸太の径級にかかわらず引き取る商社もあれば、小径丸太は安いが大径丸太は高く買うという商社もある。有利な条件のところへ丸太を持ち込もうとすると、全体の取扱量が偏ってしまう問題があった。
商社同士も競合関係にある中で、どうやって調整したのか。
商社側の得手不得手を勘案した上でバラツキなどを一本化し、一番高い価格水準に合わせていただくようにした。
一方、協議会としては、4つの森林組合が結束して安定的に丸太を納めるように徹底した。こうすることで、商社側も安定して丸太を確保できるようになり、双方にメリットが出てきている。
初代会長の再造林継続への思いを継承し解散論を乗り越える
協議会の取り組みが本格化してから10年余がたった。これまでの歩みを振り返ってどう評価するか。
一旦はなくなっていた輸出事業が軌道に乗り、安定した販路として根づいたことは大きい。ユーザーからも「これだけの量をまとめて出せるのは協議会だけだ」との声をいただいている。
丸太の輸出量が増えていく過程で、それぞれの森林組合だけでも販売先を広げられる可能性が出てきて、2024年度には「(協議会を)解散してもよいのではないか」という話まで出たことがある。
しかし、協議会を立ち上げた初代会長の堂園司氏(故人、曽於地区森林組合代表理事組合長)は常々、「バイオマス発電事業を支えているFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の優遇期間は、20年間で終わる。その後のことはわからない。しかし再造林はずっと続けていかなければならない」と語っていた。この強い思いを継承していくことを改めて確認し、協議会の活動を続けていくことを総会で決定した。
>再造林助成金の実績.xls>
それが輸出商社の拠出する再造林助成金のベースになっているのか。
そうだ。輸出量の調整だけならば各森林組合でできる。しかし、伐った後に必ず植えるための資金を確保する仕組みは、各森林組合と商社がまとまらなければできないし、継続もできない。ここに協議会の最大の存在意義がある。協議会が中心となって、輸出という“出口”と再造林という“入口”が1つにつながった。
県や市町村の助成があっても、10~15%の所有者負担が残る
再造林にかかる森林所有者の負担は、現時点でどのくらいになっているのか。
宮崎県のグリーン成長プロジェクト事業では、通常の造林補助に加えて、県・市町村独自の助成により、実質的な造林補助率は90%になっている。
鹿児島県でも通常の造林補助にプラスして、県独自の苗木代への補助や各市町村の上乗せ助成によって実質的な造林補助率は約85%になっている。
行政による手厚い支援は行われているが、それでも10~15%の所有者負担が発生しているわけか。
補助率をいくら高めても、残る1割~2割の自己負担を賄えない小規模な所有者は確実に存在する。そこを放っておくと、再造林放棄地が広がることになる。
輸出商社が拠出する再造林助成金は、この問題を解決するための大きな助けになる。
商社が木を売るだけでなく育てるところまで乗り出してきているのだから、当森林組合としても循環型林業の取り組みをさらに進めて、再造林コストの低減や国産材の付加価値アップなどを実現していかなければならない。自前の苗木生産などは、そのために欠かせないことだ。(次号につづく)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。