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徳之島から単身で本土に渡り起業、未経験者を一から育てる
幅広い事業を行っている迫田興産の全容を掴みたい。そもそもいつ立ち上がったのか。
2004年10月に、私が個人事業主として創業し、2007年12月に株式会社として法人化した。
迫田社長は、創業するまで何をしていたのか。
私は奄美群島に属する離島・徳之島の出身で、高校進学を機に本土に渡り卒業後、鹿児島市に本社を置く林業会社に就職して現場の実務や営業などの業務に携わってきた。その経験を活かして独立することを決意した。
徳之島から単身で本土に出てきて起業したのか。
そうだ。独立するにあたって、お世話になった林業会社にご迷惑をかけてはいけないので、従業員の引き抜きなどは一切せずに、私1人で立ち上げた。
それでは事業基盤などが心許なかったのではないか。
私自身、林業の素人という立場からやってきたので、何とかなるとは考えていた。
創業してから集まってくれた人達も林業については未経験者ばかりだった。ただ、次の世代を担える人材を一から育てたいという思いがあり、必ず私が現場で手本を見せるようにして作業の仕方などを教えてきた。

外国人材も含めた若い担い手が活躍、農林複合で収入が安定
今は何人が働いているのか。
社員は、外国人技能実習生を含めて約30人になっている。
さきほどハイブリッドチップの生産現場を見せてもらったが、若い人達がキビキビと働いている姿が印象的だった。
社員の大半は20歳代で、多くは異業種からの転職組だ。外国人技能実習生は、インドネシアから受け入れている。
そうした多様な人材が定着しているのはなぜか。何か秘訣があるのか。
まず林業機械化を進めて、現場作業の負担軽減などを図っている。また、当社は直営農場を持っており、農業にも取り組んでいることが就労環境を改善する上で役立っている。
「農林複合経営」は、働く人達にとってもメリットがあるのか。
林業の閑散期は、ちょうど農業の繁忙期にあたる。両方をやることで、季節に左右されない通年雇用ができ、様々な知見や技術を学ぶ機会も増えて、収入が安定してくる。これを基盤にして、週休2日制や月給制を確立している。
最新の高性能ハーベスタを活かす作業システムや保守体制を構築
迫田興産の基幹事業である素材生産は、どのくらいの規模で行っているのか。
年間の素材生産量は、約3万5,000m3になっている。
生産現場では様々な高性能林業機械が稼働していたが、とくに目に留まったのは移動式チッパーと、フィンランドのPONSSE(ポンセ)社製ハーベスタだ。高性能で知られるPONSSE社のハーベスタをあれだけ使いこなしている現場はなかなか見られない。

PNSSEE社のハーベスタは、傾斜30度程度の林地でも走破でき、立木の伐倒から枝払い、玉切りまでを1人のオペレーターでこなせる。とても重宝している。
ただ、高額な機械でもある。事業量の安定的な確保を含めて高性能ハーベスタを活かせるような作業システムを構築しないと採算が取れないだろう。
基本的な作業システムとして、1日目にハーベスタで伐倒から玉切りまで行い、2日目からフォワーダで集材し、3日目にはトラックで原木(丸太)やチップを運び出すという流れにしている。伐出用の林道や作業道をつくらなくても、ハーベスタが林内に入っていけるので、短いサイクルで作業ができる。
海外製の高性能林業機械を導入する際に課題となるのは、保守やメンテナンスのあり方だ。故障したときの対策などはどうしているのか。
九州にはPONSSE社の整備代理店がなかったので、鹿児島県内の機械商社と相談して、技術者をフィンランドの研修に派遣するなどして、保守やメンテナンスの体制を整えた。
これまでにエンジントラブルが1回だけあったが、すぐに修理できた。高性能林業機械は、導入する前の体制づくりが肝要だと考えている。
北薩森林管理署やさつま町などとの連携を軸に横展開を加速
ハイブリッドチップの生産をはじめとした迫田興産の取り組みは、もう完成形になっているように映る。これを地域へ広げて横展開する動きもあると聞いているが。
この地域の国有林を管轄する北薩森林管理署(さつま町)との間でハイブリッドチップを安定供給する体制整備を進めている。南九州では、木質バイオマス発電向けの燃料チップが慢性的とも言える不足状況になっているので、その解消につなげたい。
また、自治体との連携も進んできており、さつま町は、当社が生産しているハイブリッドチップを参考にして、森林環境譲与税を使って林地に残存している未利用材をバイオマス材として活用することに助成する仕組みを検討していると聞いている。
それはどのような仕組みなのか。
「林地残材資源活用促進事業」として、取引重量に応じて助成する仕組みになりそうだ。
このような仕組みが検討されている背景には、林地残材を放置したままにしておくと、豪雨等に伴って流出し、被害が拡大してしまうという危機感の高まりがある。
2022年6月に伊佐市で発生した梅雨期の大雨災害では、伐採地から土砂とともに林地残材が流出し、農業用水路を閉塞してしまって応急的な復旧工事に追われた経験がある。こうした事態を未然に防ぐためにも、林地残材を資源として有効利用する取り組みを早期に広げていく必要がある。

迫田興産の取り組みは、林地残材を利用するのと併せて再造林もセットで行うようにしており、そのための苗木づくりも進めているところが出色だ。
南九州に限らず日本の人工林は続々と伐期を迎えている。主伐・再造林が待ったなしで迫られており、これを効率的かつ安全に行っていくためには、高性能林業機械やコンテナ苗が不可欠だ。
機械や施設などを整えるためには、それなりの資金が必要で経営的に簡単な話ではないが、ここは腹を決めてやっていくしかない。今の局面を乗り切っていければ、次代の人工林も、それを支える担い手も育っていくと確信している。
(2026年6月16日取材)
(トップ画像=迫田興産の本社の壁には迫田社長の歩みをコミカルに描いた漫画が飾られている)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。