(前編)ハイブリッドチップで現場を変える迫田興産【遠藤日雄のルポ&対論】

鹿児島県 素材生産 造林・育林

木質バイオマス発電所の増加に伴って、燃料用チップの需給量が右肩上がりで増え続けている。燃料用チップを主体とする「燃料材」の2024年における国内消費量は前年比11.0%増の2,258万m3、このうち国内生産量は同9.7%増の1,227万m3と増加基調を維持しており、需給がひっ迫する地域も出てきている。とくに南九州では、海外向け丸太輸出が増大していることも相俟って、関係者が「取り合いになっている」と表現するほど燃料用チップへの引き合いが強まっており、供給量を増やしていくことが喫緊の課題になっている。
こうした状況の中で、遠藤日雄・元鹿児島大学教授のもとに、一筋の光明をもたらす情報が届いた。それは、鹿児島県伊佐市の(株)迫田興産(迫田成満・代表取締役)が枝葉や短コロ(根株等)を含めた「ハイブリッドチップ」の生産を軌道に乗せ、主伐・再造林の一貫作業を推進しているというものだ。しかも同社は農業も行っており、「農林複合経営」を実践することで収益性を高めているという。その最新状況を掴むため、遠藤氏は伊佐市に向かった。

枝払いをせず枝葉がついたままの丸太を移動式チッパーに投入

迫田興産の本社は、九州自動車道の栗野インターチェンジから車で30分ほどのところにある。本社社屋に隣接して、同社が運営する「南の逸品 南国やまみどり直売店」があり、店内では特産の伊佐米や野菜、果物のほか総菜や弁当などが販売されている。同社が地域密着型の「農林複合経営」を行っていることを物語るミニストアであり、来客が絶えない。

ここで遠藤氏を出迎えた迫田社長は、車を20分ほど走らせて、作業中の現場に案内した。そこでは移動式チッパーが唸りを上げており、各種の高性能林業機械がチッパーに投入する丸太(原木)を運んでいた。

遠藤

移動式チッパーに投入している丸太には枝葉がついたままだが、あれでいいのか。枝払いはしないのか。

迫田社長

この現場では主にハイブリッドチップを生産しているので、枝払いは必要ない。幹の部分と一緒に枝葉や短コロもチップ化して木質バイオマス発電所の燃料用に販売している。販売先からはさらに増産して欲しいと言われているが、フル生産が続いており、ニーズに追いつかないような状況だ。

迫田興産の本社(右奥)の隣は農産物の直売所になっている

従来からの幹チップと混合して含水率などの要件をクリア

遠藤

発電用の燃料チップには、燃焼効率を高めるために一定レベル以下の含水率が求められる。枝葉をチップ化すると含水率が上がってしまうので、発電事業者からは敬遠されるのではないか。

迫田

ハイブリッドチップは、従来からの幹のチップと枝葉や短コロのチップを混合していることがポイントになる。2年ほど前から発電事業者や地元の北薩森林管理署(さつま町)をはじめとした関係者と現地検討会などを重ね、実用可能性を検証してきた。その結果、しっかりと乾燥させたチップを混ぜて使うことでカロリーが安定するとの評価が得られた。また、高性能林業機械や移動式チッパーを活用して低コスト化を図れば、価格面でも十分に採算がとれることが確認できたので本格的に生産することにした。

枝葉などが混ざるハイブリッドチップ
遠藤

チップ用の丸太には、いわゆるC材やD材が向けられるが、南九州では発電燃料用に加えて海外輸出用の需要も増えており、競合が激しい。価格も山元渡しでm3当たり9,000円を上回るようになってきた。このような中で、ハイブリッドチップ向けの丸太はどのように選別しているのか。

迫田

径12cm以下の丸太については、伐採後に枝払いをせず、そのままの状態で2か月ほど寝かせて乾燥させてから山元土場に集めて移動式チッパーにかけている。この作業システムによって林地残材を有効利用できるようになり、生産性と採算性が大きく向上した。

枝葉付きの丸太をチッパーに投入する

林地残材が資源となり、コンテナ苗も使って主伐・再造林を推進

遠藤

林地残材の利用率は、国内全体で3~4割にとどまっており、いかに有効活用するかが大きな課題となっている。この現場のような作業システムが広がっていけば、日本林業の競争力が大きく高まるだろう。

迫田

ハイブリッドチップが生産できるようになって、山元に堆積されていた枝葉や短コロが資源として利用できるようになった。主伐跡地に残っていた枝条などがなくなり、地拵えや下刈りといった作業が大きく軽減されるようにもなってきた。
これに加えて、当社は苗木も生産しているので、主伐・再造林の一貫作業を行うことで、さらなる低コスト化を目指している。

枝葉や短コロを搬出した後の伐採跡地では地拵えをせずに造林できる
遠藤

迫田興産は、苗木もつくっているのか。

迫田

2019年からスギとコウヨウザンのコンテナ苗をつくっている。私自身、若い頃に挿し木をやっていた経験があり、農業で培った土づくりや水やりの技術なども苗木生産に応用している。
コンテナ苗は活着がよく、春や秋に限らず通年で植えられるので、植栽作業の平準化ができるメリットがある。

遠藤

早生樹のコウヨウザンも手がけているのか。

迫田

コウヨウザンは、スギの倍の速さで育ち、植栽してから30年ほどで主伐期に届く。伐った後も萌芽更新で再生するので、2代目からは苗木代も植え付けの手間もほとんどいらなくなる。再造林コストを大きく引き下げる可能性があるので植栽を進めている。

迫田成満・迫田興産社長

自前のストックヤードを活用、直販を通じて丸太の価値を高める

ここで迫田社長は、遠藤氏とともに車で5分ほどの距離にあるストックヤードに移動した。そこには山元土場から運ばれてきたハイブリッドチップのほかに、様々な丸太が積まれていた。

遠藤

このストックヤードは、いわゆる仕分け拠点になっているのか。

迫田

そうだ。伐出した丸太はストックヤードに集め、A・B・C・D材に仕分けている。基本的にA材・B材は市場や製材工場へ、曲がり材などは輸出用に、残りはチップ用に回すようにしている。

ストックヤードに運び込まれるチップ
遠藤

輸出用丸太の動きはどうか。

迫田

主に中国と韓国に輸出している。輸出拠点は、中国向けは川内港、韓国向けは八代港を利用している。

遠藤

なぜ自前のストックヤードを構えているのか。

迫田

ここ伊佐市は、隣県と境を接しており、立木の購入競争が激しい。どこよりも高く買って、どこよりも高く売る努力を怠らないことが求められる。極端に言うと、10円でも高く売る力をつけなければ、生き残れない。そのためには直販の比率を上げる必要があり、10年ほど前からストックヤードを整えてきた。

遠藤

時代の先を行くような取り組みに次々と着手していることに感心させられる。その根源にあるものを知りたい。そもそも迫田興産の創業はいつなのか。(後編につづく)

(2026年6月16日取材)

(トップ画像=稼働中の移動式チッパー)

『林政ニュース』編集部

おかげさまで、1994年の創刊から32年目に入りました! これからも皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。

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