5軸CNCルーターを使いこなし、従来なかった斬新なデザインを実現
アーティストリーの本社兼工場は、名鉄小牧線の味美駅から徒歩10分ほどの住宅地を抜けたところにある。木材加工場を構えるには似つかわしくない立地にも映るが、交通アクセスがよく、周囲には紙・パルプや電気・金属などの工場や事業所も多い。
同社は、この地で994年に創業し、現在は40名余の社員で「職人集団」を形成している。年間に約60社、400件以上の案件をこなしており、東海地区では最大規模の事業量を誇る。
同社の成長を支えている“強み”の1つが先駆的に導入した5軸CNCルーターだ。複雑な立体加工を短時間で高精度に行える最新マシンを2台保有している。これに熟練の職人技と3DCADを組み合わせることで、従来にはなかった斬新かつハイセンスなデザインを実現している。

2023年に同社がデザインから設計・施工まで担当した愛知県公館(名古屋市)のエントランスでは、県産材を使って柔らかなカーブ(曲線)を活かした温かみのある空間をつくりあげ、大きな反響を呼んだ。このほかにも、オフィスビル・百貨店などの内装木質化や木製什器等の設置などを全国各地で行っている。
「日本唯一のサウナ」を手がけ、設計・施工・監修が基軸事業に成長
アーティストリーは、特注家具メーカーとしては意外な“強み”も持っている。それは、サウナの設計・施工、そして監修だ。
心身が「ととのう」として人気のサウナを同社が手がけるようになったのは、2021年のこと。北海道の知床半島にある老舗ホテルから世界に誇れるサウナをつくりたいとの注文が舞い込んだ。高度なデザイン力と木材の保存処理技術が求められる案件だったが、同社は半年ほどで希望どおりのサウナを完成させた。

これが「日本唯一のサウナ」としてマスメディアやソーシャルメディアで頻繁に取り上げられ評判が広がっていった。今も10件以上の案件が進行中であり、サウナ関連事業は年商の5%程度を占めるまでに育ってきている。
同社は、サウナを製作するだけでなく、温浴サウナ業者とともにサウナのデザイン・設計から施工までをゼロから引き受ける場合もある。さらに、デザイナーや施工者向けに、サウナに関するノウハウなどを監修者としてサポートするサービスも行っている。ここまで踏み込んでビジネスのウイングを広げているところが同社の真骨頂であり、それを担う人材がいることが、最大の“強み”と言える。
「名前の出せる仕事」を目指し直接取引増加、同業連携も拡大
アーティストリーの積極果敢な事業展開を牽引している社員の1人が昨年4月に取締役に昇格した大西功起氏(40歳)だ。大西氏は、名古屋芸術大学デザイン学部を卒業し、大手家具メーカーで勤務した後、2015年に同社に職人として入社。新規事業開拓などを中心に精力的に活動しながら、サウナの本場であるフィンランドの大使館から認定ビルダーの修了証を取得し、「木工サウナー」としての顔も持つ。

その大西氏は、「名前の出せる仕事がしたい」と口にする。この言葉の背後には、特注家具を巡る業界特有の階層構造がある。図のように、企業や個人などが発したオーダーが同社に届くまでには、ゼネコンや建材・資材業者などが介在し、同社は2次下請けの立場に置かれることが少なくない。そうなると、「自分達が一生懸命取り組んだ成果をホームページにアップすることもできない」という歯がゆい状況になる。

こうした構図を変えるべく同社は、施主や設計事務所などへのダイレクトなアプローチを重ね、直接取引をするケースが増えてきた。併せて、社内にマイスター制度を設けるなどして、特注家具メーカーとしての社会的ステイタスアップを図っている。
この流れを加速するため、東海地区の同業他社とパートナーシップを構築することにも動き出している。大西氏は、「3D加工機を持っていながら十分に活かしきれていないところが多い。その一方で、弊社だけでは生産が追いつかない実態もある。ならば積極的にノウハウを提供して共存共栄を図ればいい」と言う。この路線には、「ライバルを育ててどうするんだ」という声も出ているようだが、大西氏は、「100の仕事を取り合うより、市場全体を1万に広げる方が重要」と意に介さない。「将来的には東北や四国などの同業者とも協業したい」とも口にする。
既成の枠組みにとらわれない同社からは、今以上に“大化け”する予感が漂ってきている。

(2026年2月24日取材)
(トップ画像=稼働中の5軸CNCルーター)
『林政ニュース』編集部
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