林野公共予算は4年連続の「2,600億円」クリアが確実に
岸田政権が打ち出した過去最大規模の経済対策の中核となる今年度(2021年度)補正予算(案)が11月26日に閣議決定された。林野関係の補正追加額は約1,242億円で、国土強靭化やウッドショック対策が盛り込まれた*1。早速、中身をみていこう。
林野一般公共事業、すなわち森林整備・治山事業の補正追加額は767億円。比較対象となる前年度(2020年度)第3次補正予算は957億円だった。これよりは190億円ほど目減りしたが、それをとやかく言う関係者はいない。前年度が“出来すぎ”の金額だったからだ。
767億円のうち国土強靭化対策分として492億円が措置された。これも前年度3次補正よりは減少したが、同様に目くじらを立てる向きはみられない。国土強靭化対策は昨年末に「5か年加速化対策」としてリニューアルされ、初年度は多めに配分されたからだ。林野庁幹部は、「今年度補正でも必要な額はきっちり確保されている」と言う。
林野公共予算の大目標は、民主党政権時に断行された大幅カット前の2,600億円(2009年度時点)を確保することだ。昨年末には、前年度3次補正と今年度当初予算を合わせて2,889億円が措置され、3年連続で目標ラインを突破し、3,000億円に迫った。ここまではいきそうもないが、この年末に決定する来年度当初予算で今年度並みの金額が確保されれば、4年連続の2,600億円クリアは確実な状況となっている。
TPP対策に前年度を上回る495億円、原種苗木増産施設を新設
非公共事業の目玉はTPP等総合対策であり、「木材産業国際競争力・製品供給力強化緊急対策」として、一部公共予算を加えて495億円が計上された。前年度の「合板・製材・集成材国際競争力強化・輸出促進対策」(363億円)からネーミングを改め、予算額もアップ。及第点の出来といえよう。
従来のTPP対策から上乗せ要因となっているのは、いわゆるウッドショック対策を行うことだ。外材製品の輸入減で国産材製品の供給力増強が求められているが、乾燥施設の不足などがボトルネックになっている。ここをメインターゲットに施設整備費などを補助し、横架材や羽柄材などの国産材化を進めることにしている。
川下の加工施設を整備しても、肝心の国産原木が出てこなければ供給力は高まらない。そこで同対策では、公共予算も活用して、路網整備や高性能林業機械の導入、伐出・再造林、苗木生産施設の整備、さらに輸出促進や木材消費拡大なども総合的に助成できるようにした。
同対策の一環として、森林研究・整備機構がエリートツリー等の原種苗木増産施設を新設する費用(2億円)も盛り込んだ。挿し木高速増殖用養苗温室や人工気象制御温室などを整備することにしている。
また、コンテナ苗など苗木生産への新規参入者を支援するとともに、普通苗の干害対策も助成メニューに加えている。
新規就業者確保へ約3億円、ドローン共同購入などを支援
非公共事業では、TPP対策のほかに、「『緑の雇用』新規就業者育成推進事業」にも2億8,300万円を追加した。前年度3次補正の2億3,500万円から4,800万円の増額だ。
これを財源にして、林業への就業者希望者向けガイダンスを大都市で5か所程度、地方都市で30か所程度開催する予定。また、最大3か月のトライアル雇用(短期研修)を実施して、現場作業などに関する適性判断を行えるようにする。
さらに、多技能化研修として、素材生産従事者が造林技術の習得に関する研修を最大2か月受けられる支援も行う。
担い手対策では、農林水産省全体で「次世代を担う農林漁業者の生産性向上支援」の予算を100億円計上しており、このうち77億円で「スマート農林水産業の全国展開に向けた導入支援」を行う。中小事業者がドローンなどを共同で購入・利用する費用に対して助成するほか、スマート機械等のカスタマイズや人材育成なども支援する(補助率2分の1または3分の2)。担当官は、「これまでカバーできなかった林業者もサポートできるようになる」と話している。
(2021年11月26日取材)
詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。