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ほぼ毎日どこかで「市」が立つ、買い手市場でも存在感を放つ
諌本社長の言う「時代に合った流通システムの構築」は、原木市場を含めた国産材業界全体が直面している課題だ。この課題を解決していくためには、従来からのビジネスモデルを見直していくことが欠かせない。
とくに、原木市場については「市売り」、つまり「競り」にかけて販売する方式を再考する必要があるだろう。昭和50年代の中頃までは、「競り」にかければ原木が高値で売れる売り手市場だった。それがやがて買い手市場に変わってしまい、最近は往時の活気がないように映る。
原木に対するニーズの変化やサプライチェーンを見直す議論の中で、「原木市場はもういらないのではないか」という意見を聞くこともある。しかし、ここ日田の場合は、事情が異なる。すでに述べたように、個々の製材工場が必要とする原木をきめ細かく取り揃える機能を原木市場が担っている。弊社は、月に2回の「市」を開いており、出した原木はすべて売れていく。昔と比べて買い手市場になってはいるが、今でも原木市場が必要とされていることを実感している。
この地域には13もの原木市場があるが、過当競争にはなっていないのか。
それぞれの原木市場が月2回の「市」を開くから、土・日曜日を除くとほぼ毎日どこかで「市」が立っている状況だ。それだけのニーズが確かに存在しているし、各原木市場の得意分野なども明確になっているので共存できている。
重要な価格形成機能、適正な利益が山元に戻る仕組みを目指す
原木市場に期待される重要な役割の1つに、価格形成機能がある。周知のように山元の立木価格は、市場逆算方式で決まる。原木や木材製品の市場取引価格から必要な経費や利益を差し引いたものが立木価格になる。この価格が低迷しているため、林業経営が苦しくなっており、森林所有者も元気が出てこない。
そのとおりで、今、最も必要なことは、原木や木材製品の価格を上げることだ。だが、価格形成の主導権を握っているのは、住宅メーカーなどエンドユーザーに近い企業であり、コストダウンを迫られていることもあって、「もっと安いものはないか」と求めてくる実態がある。適正な利益が山元に戻るような仕組みを考えなければいけない。
6月2日に閣議決定された最新版の『森林・林業白書』も価格問題に踏み込み、「川上から川下までの関係者が再造林を含む森林の育成コストへの理解を深めた上で、価格が形成されることが重要」と記している。
そうした問題意識が幅広く共有されることが重要だ。そのためには、原木市場の関係者も、これまでの業界内の付き合いを超えた広がりのあるネットワークづくりに踏み出す必要がある。
「ひた森の担い手づくり協議会」が新たなネットワークを広げる
そうした新しいネットワークづくりの先行事例となるような動きはあるか。
弊社を含めた原木市場や製材工場をはじめ日田の関係者が結集して2023年8月に設立した「ひた森の担い手づくり協議会」は1つの参考になるだろう。「森の担い手」を増やしていくために、研修会や座談会、情報発信活動などを続けており、新しいつながりができてきている。

(画像提供:ひた森の担い手づくり協議会)
なぜそのような協議会を立ち上げたのか。
「林業をやりたい」という志を持って参入してくる若い人も増えているが、それ以上に高齢化でやめていく人の方が多い。このままでは、伐採も造林も進まなくなり、原木市場や製材工場は仕事ができなくなるという危機感があった。
協議会の名称を決めるとき、あえて「林業」という言葉は使わなかった。インターネットで「林業」と検索すると林業機械ばかり出てくるが、「森」で検索すると、豊かな森林や自然と親しむ暮らしに辿り着く。それで「森」をネーミングに持ってきた。
その効果は出ているのか。
大分県内だけでなく、福岡・熊本・宮崎県などから問い合わせがきており、年に4回ほど行っている体験研修には毎回20人前後が集まる。若い人や、今は別の仕事をしているけれど林業に興味がある人、子育てを地方でしたい人などがやってくる。いきなり伐採の専門家になるのは難しくても、造林作業なら入りやすいし、新しい感覚で日田に移り住んでくれる人も増えている。
森林とのつながりを深めながらストック機能を高めて期待に応える
そのような協議会を原木市場が主体的に運営していることに新しい可能性を感じる。定期的に「市」を開いて原木を売買するだけでなく、森林づくりや地域振興にも積極的に関わっていくことで、原木市場の位置づけも高まっていくだろう。
かつての原木市場は、集まってきた原木を売っていればよかったが、今は森林づくりのあり方にまで踏み込む必要がある。自ら森林を取得して循環型林業を実践しようとする原木市場も出てきている。
原木市場が本来的に持っているストック機能に、そうした役割が加われば、林業・木材産業を支える基盤が強固になる。経営者からすれば、ストック(在庫)は減らした方がいが、それを徹底しすぎるとウッドショックのときのように供給不安が生じてしまう。
原木は、長く置いておくと虫が入ったりして品質が落ちる。木材製品にして在庫しておく方がいいが、保管するための費用負担が大きくなる。
したがって、「いつでも市場に原木を出せる森林がこれだけある」という体制づくりを進めることが重要だ。森林は、そのままでも成長してくれる。これは私共の業界が持っている大きな強みだ。伐採・搬出が可能な森林の情報を原木市場がストックしていくべきだろう。
全国的には、森林を所有し続けることが重荷になり、“山離れ”が進行している地域もある。この流れを食い止め、反転させるモデルが日田から生まれることを期待したい。
何よりも原木や木材製品の取引価格を適正化して、山元への利益還元を増やすことを目指したい。
その上で、森林を所有し管理し続けることを正当に評価できるような仕組みの構築も考えていきたい。森林所有者から固定資産税を取るのではなく、災害防止などの公益性も含めて、逆に所有者を支援できるようになれば、森林の価値も上がるし手入れも進む。森林づくりのコストを社会全体でカバーしていくことの重要性を訴えたい。

(2026年5月30日取材)
(トップ画像=日田中央木材市場に持ち込まれた原木は超ロングタイプの選別機(左)できめ細かく仕分けられる)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。