幼馴染みの2人が切磋琢磨し成長、全国コンクールで表彰される
ヨシナリ林業の創業は平成10年で、平成18年に株式会社化した。一方の堀江林業は、昭和54年に茨城県森林組合連合会の作業班から独立するかたちで発足し、同じく平成18年に株式会社となった。
その後、ヨシナリ林業は、平成19年度の国有林間伐推進コンクール(林野庁主催)で優秀賞を受賞。受賞理由は、39度の急傾斜地にもかかわらずha当たり107mの高密路網を整備し、高性能林業機械を有効活用できる作業システムを確立したことだった。続いて、平成22年度の同コンクールでは、堀江林業が最優秀賞を受賞。高性能林業機械のアタッチメント改良と大型運搬車の導入により大幅なコストダウンを達成したことが高く評価された。


全国規模のコンクールで“実力”が認められた両社には、共通点が多い。林業機械化に積極的なこと、素材生産をメインにしながら事業規模を拡大していること、地元出身の若手社員を主力として育成していること――そして、社長の年齢も近い。ヨシナリ林業の吉成良二は50歳。堀江林業の堀江賢一は49歳と、ともに働き盛りだ。
しかも、この2人は、実家(常陸太田市内)が隣近所の幼馴染みだという。「小さい頃からよく知っているから、お互いに何でも言える」という間柄が、切磋琢磨しながら社業を伸ばしていく好循環を生み出している。
年間2~4万m3を伐出、約10m3/人・日の高生産性を実現
現在、ヨシナリ林業の年間素材生産量は3万5,000~4万m3、堀江林業は約2万m3に達しており、全国的にみても大規模事業者にランクされる。
林業機械の保有台数も多い。ヨシナリ林業は、4台のハーベスタのほかザウルスロボ(7台)、グラップル(14台)、フォワーダ(6台)、木材破砕機(1台)など計40台を抱えている。堀江林業も、3台のハーベスタをはじめ、ヨシナリ林業とほぼ同様のラインナップを揃え、計20台の機械を使いこなしている。
社員数は、ヨシナリ林業が26名、堀江林業が16名。単純計算で、1人1台以上の高性能マシンがあることになる。平均年齢は、両社とも40歳前後。こうした陣容により、両社の素材生産事業では高い生産性が実現されており、1人1日当たり10m3近くに達している。

現在、堀江林業が手がけている間伐事業地の1つ、常陸大宮市内の国有林では、50haの対象地から10~12月の3か月で4,300m3のスギ・ヒノキを伐出することにしている。現地を見た吉成が「これは大変だ」と口にしたほどの典型的な間伐手遅れ林分。立木にツルがからみつき、雑木が入り混じる作業環境の中で、堀江らは2伐5残の列状間伐を着実に進めており、予定どおり年内には仕事が片づくという。「地元の山だからやりづらいところでもやっていかないと」――これが2人の共通認識になっている。
新たな“受け皿”・宮の郷木質バイオマス発電所が本格稼働
ヨシナリ林業と堀江林業のホームグランドといえる茨城県北部には、県内最大の木材加工・販売拠点である宮の郷木材コンビナートがある。同コンビナートには、原木市場や木材乾燥、製材、プレカットなどの各種施設・工場が集積しており、両社が伐出した原木(丸太)の有力な受け入れ先となっている。

このコンビナートに11月から、新たな“受け皿”が加わった。日立造船(株)(大阪市、谷所敬社長)が建設を進めていた木質バイオマス発電所が商業運転を開始したのだ。同発電所は、出力が5,750kW。FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の認定を受けており、発電用燃料には100%未利用木材を使う。年間のチップ消費量は約6万3,000トン(含水率40%)、原木換算では約10万m3に及ぶ。
大量のチップを安定的に供給するため、発電所に隣接してチップ製造工場を整備し、広大なストックヤードも確保。チップ用原木の収集は、日立造船と地元の素材生産・チップ業者で組織している宮の郷バイオマス有限責任事業組合が担っており、両社もその主要メンバーだ。同発電所が未利用木材を購入し始めたことで、「材価を下支えする効果は確実に出ている」と吉成は話す。そして、「山の資源をすべて利用できる体制づくりを急がなければ」と続けた。(後編につづく)

(2015年11月6日取材)
(トップ画像=常陸大宮市内の間伐事業地(国有林内)、伐採・造材にハーベスタを活用している)
『林政ニュース』編集部
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