福井県が新たに「森林・林業の未来を切り拓く基本計画」を策定

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福井県が新たに「森林・林業の未来を切り拓く基本計画」を策定

福井県は、今年度(2025年度)から2029年度までを期間とする「ふくいの森林・林業の未来を切り拓く基本計画」を策定した(3月28日に公表)。2020年度から実施してきた前計画の数値目標を引き上げ、稼げる林業の確立に向けた区分(ゾーニング)等を明確化し、工場誘致の方針を見直した上で、新たに2つの指針を打ち出した。

2つの指針を示し、稼げる林業と山村活性化の両立を目指す

指針の1つめは、「Fukui forest Design推進プロジェクト」。2023年9月に飯田グループホールディングス(株)(東京都武蔵野市)らと結んだ協定*1にも盛り込んだ構想の実現に向け、「大きな林業」と「小さな林業」の最適な組み合わせによる「稼げる林業」と「山村地域の活性化」の両立を目指す。

2つめの指針は、「森を『守り』『活かし』『慈しむ』推進プロジェクト」で、山地災害対策、特用林産物を起点とした森林ビジネスの展開、県民運動などを展開することにしている。

 「ふくい型林業経営モデル」確立、原木生産量は27万m3に増加へ

「Fukui forest Design推進プロジェクト」では、約12万haある県内人工林を、①収益性が高く災害リスクの低い林業適地(3万ha)、②集落周辺の急勾配な人工林(1万ha)、③収益性が低い林業不適地(6万ha)、④残りの保安林など(2万ha)──にゾーニングした上で、①では主伐・再造林を推進する「大きな林業」、②では非皆伐施業を主体とする「小さな林業」、③では公的整備による針広混交林化を進める。

とくに、「大きな林業」の対象林では「ふくい型林業経営モデル」を確立し、主伐・再造林の低コスト化や、人材の確保・育成、県産材需要の拡大などに取り組む。

「ふくい型林業経営モデル」の具体的なイメージとしては、平均傾斜35度未満で、8t以上のトラックが走行できる道と接し、山土場が設置でき、C材割合が30%以下でha当たり500m3以上生産可能──などの条件を明確化している(トップ画像参照)。

同県の年間原木(丸太)生産量は、2023年度時点で23万9,000m3となっているが、新計画では2029年度に27万m3まで増やす目標値を設定した。

県産材の需要を拡大するため前計画では大型工場の誘致を計画していたが、人口減に伴う住宅市場のシュリンク(縮小)などを踏まえ、適切な規模のB材工場を誘致する方針へと見直した。

一方、「小さな林業」に関しては、都市部からの移住・定住や自伐型林業団体の活動などを支援し、「半林半X」のモデルづくりに取り組む。同県では2023度に「自伐型林業大学校」(主催:ふくい自伐型林業協会)が開講しており、自立に必要な知見や技術を習得するルートができている。

また、地域おこし協力隊の制度を活用して自伐型林業に関わる移住支援も行っており、森林を活用したトレイルイベントなども展開して、「山村地域の活性化」につなげることにしている。

新たに林業の魅力PR事業と販売力強化・販路拡大事業に着手

福井県は、新たな基本計画に基づき、今年度(2025年度)予算を活用して2つの新規事業に着手する。

1つは、「林業の魅力PR事業」(予算額1,348万円)。著名人を起用した動画を作成し、全国への発信力を強化して林業・木材産業への新規参入を促す。

もう1つは、「ふくいの木販売力強化・販路拡大支援事業」(同955万円)で、県産材の販売力強化を目的とした人材育成や、既存の住宅市場以外での販路開拓や需要拡大に取り組む。

このほか、従来から実施している各種事業なども組み合わせて、新基本計画で打ち出した2つの指針(プロジェクト)の実現を目指すことにしている。

(2025年3月28日取材)

(トップ画像=「ふくい型林業経営モデル」のイメージ)

『林政ニュース』編集部

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