早生樹を育成し、2050年までに燃料材を年30万m3生産へ
同県内では、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の認定を受けた木質バイオマス発電所が8基稼働しており(表1参照)、未利用木材をはじめとした燃料材へのニーズが高まっている。政府が2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」でも、電力構成の最大電源に再生可能エネルギーを位置づけており、木質バイオマスの利用促進は国家的な課題になっている。一方、人口減に伴う住宅市場の縮小で建築用木材の需要は減少しており、脱炭素化や新規需要の創出などを図るため、新たに県を挙げてエネルギー源となる森林づくりを進めることにした。

ただし、「A・B材などの建築用木材を供給する森林づくりを否定するものではない」(同県森林経営課林業改革室)ことを大前提にしており、遊休農地の活用を含めて、従来からの林業と“すみ分け”をしながら新たに短伐期林業を展開することにしている。
皆伐・萌芽更新で20年以内の短伐期林業を推進、支援事業も
「エネルギーの森」の候補地は、獣害を受けた人工林や手入れ不足の広葉樹林など、未利用で経済価値の低い森林とし、まず皆伐を行った後、萌芽更新が可能な成長の早い樹種を植栽する。そして、概ね20年以内をメドに成林させてから皆伐し、萌芽更新によって再生させ、循環利用していく。
植栽する樹種は表2のようにリストアップしており、県内の気象条件などを踏まえながら“適地適木”を考慮して育成していく。

同県では、伐期20年の施業サイクルが軌道に乗り、燃料材の販売価格が1m3当たり9,000円程度で推移すれば、ha当たり60~70万円の収益が安定して得られると試算しており、50人程度で約1万2,000haの管理が可能になると見込んでいる。
このため、今年度(2025年度)の新規施策として「エネルギーの森実証支援事業」(予算額約1,600万円)と「エネルギーの森整備支援事業」(同約400万円)を創設し、エネルギーの森を造成する事業者らの取り組みをサポートしていくことにしている。
(2025年3月25日取材)
(トップ画像=「エネルギーの森づくり」のロードマップ)

『林政ニュース』編集部
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