あくなき挑戦で事業領域を広げる幸の国木材工業(株)【突撃レポート】

あくなき挑戦で事業領域を広げる幸の国木材工業(株)【突撃レポート】

熊本県山鹿市の旧鹿北町周辺は、「肥後杉(あやすぎ)」など優良材の産地として知られ、森林資源を有効利用して林業の振興を図ることが長年の課題となっている。この課題に答えを出すべく、地場産材の中核加工拠点として存在感を増しているのが幸の国木材工業(株)(瀬口力社長)だ。原木の調達から製材、乾燥、プレカットまでを一貫して手がける同社は、2023年に先進的な家づくりを行っている(株)Lib Work(リブワーク)(熊本県山鹿市、瀬口力社長)の完全子会社となって以降、事業領域が広がり、ビジネスチャンス(商機)も増えてきている。

第3セクターとして発足、民営化で業績固め、新たな舵を切る

幸の国木材工業は、町や森林組合、製材会社など地元関係者が一体となって1988年4月に第3セクターとして発足した。設立の目的は、地場産材の高付加価値化と販路拡大であり、当時としては最先端の加工ラインを導入して船出した。

だが、景気低迷のあおりを受けて業績が伸び悩み、全国的に第3セクターの経営破綻が問題化したこともあって、2006年策定の「第1次山鹿市行政改革大綱」を踏まえて経営主体の見直しに着手。様々な協議や調整を経て、2016年6月の臨時株主総会で自社株取得(3,685万円相当)が可決され、完全民営化を果たした。

以降は業績が安定し、年間約600棟分のプレカット材を加工し、売上高は8億円前後で推移した後、2022年には過去最高の約12億円を計上した。

ここで同社は、新たな成長を目指し、思い切って舵を切った。2023年7月に、地元の山鹿市に本社を置くハウスメーカー・Lib Workの完全子会社化となったのだ。

Lib Workの下で事業エリア拡大、関東への出荷増える

Lib Workは、インターネットやVR(ヴァーチャルリアリティ)を活用した新しい家づくりで住宅・不動産業界に新風をもたらしており、2015年に福岡証券取引所に上場した後、2019年6月には東証グロース(旧・東証マザーズ)への上場を果たした。WEBマーケティングに強みを持ち、国産材率98%のサステナブルな家づくりを行っている。社長の瀬口力氏は、「ネットで『家』を売る会社から「暮らし」を「創造」する企業への成長を目指す」(WEBサイトより)と、さらなる飛躍を目論んでいる。

Lib Workの傘下に入ったことで、幸の国木材工業の事業エリアは大きく広がった。製品出荷先は九州内にとどまらず、関東地方にも及ぶようになった。とくに、2024年1月から始まった千葉県への出荷は、年間約30棟分の製品を納めるようになっている。

製品の出荷先が広がっている

ここで問題となるのが、熊本県から千葉県までの長距離輸送コストをいかに抑えるかだ。トラックなどの陸送だけでは、費用が嵩み、ドライバーの負担も大きくなる。そこで、船舶による輸送なども検討した結果、日本貨物鉄道(株)の「JR貨物」を利用することにした。

新たな物流ルートとして、工場で加工した製品をJR貨物の20フィートコンテナに積み込み、熊本駅までトラックで運び、鉄道を使って関東地方まで輸送。関東地方では、提携するプレカット工場で製品をトラックに積み替えて個別配送するという流れをつくっている。

20フィートコンテナに積み込まれたプレカット材

同社の星子元宏・取締役によると、JR貨物を利用することで、「トラックと比べて輸送コストが10%程度削減できる」ことに加え、「二酸化炭素(CO2)排出量も減らせるので、Lib Workが掲げるサステナブルな家づくりにも寄与できる」という相乗効果が出ている。

JR貨物特有の難しさに対応、未知の分野に恐れずチャレンジ

もっとも、JR貨物の利用にあたっては、特有の難しさがつきまとう。最大の課題は、積み込みの仕方だ。

20フィートコンテナの内法寸法は、長さ6,007mm×幅2,328mm×高さ2,178mmであり、内容積は30.4m3、積載重量は8,800kg。このスペースの中に、製品を隙間なく積み込めれば、輸送効率は高まる。

だが、とくにプレカット材はサイズがランダムであり、隙間が空きやすい。そこを工夫して、できる限り同じサイズの材をまとめて隙間を埋めるようにしている。また、荷役作業も同社の社員が行うようにして、積み込み・積み下ろし作業の効率化を図っている。

輸送期間の違いも考慮する必要がある。トラックであれば九州~関東間は1~2日で届けられるが、JR貨物の場合は積み替えなどを含めて5日程度を要する。この時間差を踏まえて、早めに工程計画を立てる必要がある。

村木勇一・幸の国木材工業常務取締役

同社の村木勇一・常務取締役は、「今後も関東圏への出荷量は増加していくので、より効率的な輸送体制を構築する必要がある。複数の物件をまとめて運んだり、輸送方法を一部内製化することを検討したい」と話している。  

同社は、乾燥機やプレカット加工設備を九州でいち早く導入するなど、進取の気性に富んだ社風を有している。村木常務は、「第3セクター時代から独立採算制を採用し、未知の分野にも失敗を恐れずに挑戦してきた。その経験がこれから活きてくるだろう」と前を見据えている。

(2025年1月30日取材)

(トップ画像=地場産材の中核加工拠点となっている幸の国木材工業)

『林政ニュース』編集部

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