目次
避難所へ食料搬送、木炭・コンロ・ペレットストーブなども
農林水産省は3月11日に設置した緊急災害対策本部を中心に被災地の調査と生活支援に注力している。
東北森林管理局と関東森林管理局は、車両20台を確保して3月16日から避難所への食料搬送を続けている。また、関係団体は木炭・練炭の供給体制を整え、石巻市、気仙沼市、仙台市、喜多方市などへ木炭26t、木炭コンロ(七輪)1,300個を供給、さらに木炭等404t、コンロ750個を即時供給可能分としてストックした。民間ベースでも、食料や燃料、ペレットストーブなどの物資を届ける活動が相次いでおり、被災地支援の輪が広がっている。

一方、安否不明となっていた宮城県内の森林管理署職員(1名)は3月18日に死亡が確認された。また、東北6県の森林組合系統では、曽根哲夫・岩手県森林組合連合会会長を含めた2名が遺体で発見され、1名が安否不明となっている。

当面の仮設住宅3万戸以上、木杭・合板などは3万m3以上が必要
被災地では、過去最大規模となる応急仮設住宅の建設が本格化してきた。各県からは3月31日時点で約3万3,000戸の建設要請が出ており、プレハブ建築協会は約3万戸を供給する計画(うち2万戸は同協会仕様、1万戸は各住宅メーカー独自仕様)。また、全国中小建築工事業団体連合会は2か月で300戸を供給する予定であり、岩手県の住田町や秋田県なども独自に仮設住宅を建てる準備に入っている。
標準的な仮設住宅の建設には、基礎用の木杭(径90mm×長さ900~1,500mm)、床パネル(厚さ12mmの合板)、根太(90mm×30mm)のほか、天井・押し入れ用・間仕切り壁用の合板や、玄関外回り等の製材などに木材が使用される。1戸当たりに必要な木材量は、杭丸太が40本(0.423m3)、合板が18枚(0.380m3)、製材が38本(0.186m3)と試算されており、3万戸を建設するためには合計で3万m3を超える量になる。
今回の震災は戦後最悪の被害をもたらしており、阪神・淡路大震災時に建てられた仮設住宅(半年間で約4万8,000戸)を上回る戸数が求められることは必至。必要資材を迅速に確保することが喫緊の課題となっている。
林野庁と国土交通省、経済産業省は3月17日に「東北地方太平洋地震に伴う住宅関連資材対策会議」を開催して、資材調達に関する情報収集と対策を検討する体制を整え、翌18日には環境省も加わり4省庁連名で住宅関連資材や建設機械、労働力等確保を求める文書を関係団体等に通知した。また、24日から4省庁合同で住宅資材の需給情報に関する緊急調査を実施。28日には、4省庁に総務、厚生労働、防衛の各省も加わって被災者用住宅に関する検討会議を開くなど対応を急いでいる。
需給逼迫に危機感、各地の合板工場は増産体制に入る
震災で有力木材企業が大きな被害を受け、合板をはじめとした木材需給に逼迫感が強まっている。「仮設住宅特需」を当て込んだ思惑買いなどの動きも出ており、買い占め・売り惜しみや価格つり上げなどを排除しながら、全国ベースで安定的な木材供給体制を構築することが復旧・復興に向けた重要課題に浮上している。
巨大地震による津波により東北沿岸で操業していた合板工場が甚大な打撃を受けた。製材工場も宮城県石巻市の山大(株)など岩手県から茨城県等にかけての沿岸部で操業していた工場に大きな被害が発生。また、福島第1原発の事故により、同原発から30km圏内にある約30の製材工場や建材店などは避難を余儀なくされている。
有力工場が操業不能の事態に追い込まれた合板業界は、全国各地の合板工場で増産体制に入り、需給安定に努めている。また、秋田県及び岩手県の内陸型の製材・集成材工場などには大きな被害は出ておらず、順次操業を再開している。
その中で、増産にあたって課題となっているのは原木の安定的な確保。また、製材工場にとっては、主力製紙工場の被災でチップの売り先が失われたこともネックになっている。三菱製紙(株)の八戸工場(青森県八戸市)は5月中旬から操業を再開できる見通しだが、日本製紙(株)の石巻工場(宮城県石巻市)などは復旧のメドが立っていない。製材加工に伴って出てくるチップの販売先がないと木材流通に“目詰まり”が生じ、増産への足枷になってくる。
皆川長官「被災地以外の合板工場の増産で十分対応できる」
林野庁は国交省などとの「住宅関連資材対策会議」と並行して、3月22日には日本合板工業組合連合会など関係4団体と「合板需給情報交換会」を開催。続いて28日には、全国森林組合連合会と全国素材生産業協同組合連合会に対して、国産材原木の安定供給に取り組むよう要請した。皆川芳嗣長官は各種会合で、「東北沿岸部の合板工場が被災したが、他地域の工場の増産で全国的な需要に十分対応できる。原木需給のマッチングと情報の共有が重要になる」と繰り返し強調している。
被災地の森林に大きな被害は出ていないが、原木の出荷先は失われた。青森県森林組合連合会などは、船で西日本の工場などに原木を直送することを検討している。これまでの“商流”を超えて、全国的な視点から原木の“適正配分”を図ることが求められている。

林政審でも震災対策を議論、岡田会長が惨状を切々と伝える
3月29日に農林水産省の会議室で林政審議会が開催され、急遽、震災対策が議論された。被災地である岩手大学教授の岡田秀二・林政審会長は、「現地はようやく道がついただけ。安否不明者がいるため瓦礫も片づけられず、(惨状は)全然変わっていない。林野サイドでまずできることは仮設住宅を早急に建てること。住田町は独自に100戸を建設する。県からの要請を待たずに支援に乗り出せる仕組みをつくってほしい」と切々と訴えた。
震災対策以外では、平成23年度の森林・林業施策について諮問・答申が行われたほか、最新版となる平成22年度『森林・林業白書』の内容について検討。だが、委員からは平板な感想しか出ず、型どおりの“審議”に終始した。震災で状況は一変している。林政審も形式的な中身を見直すときだ。
(2011年3月15日~31日取材)
(トップ画像=仮設住宅用杭丸太の輸送、画像提供:米代西部森林管理署)

『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。