放置状態の里山林は約300~400万ha、国産広葉樹材の有効利用が課題
全国の里山にある広葉樹林は、かつては薪や木炭などの燃料供給源として地域住民に利用されていたが、1955(昭和30)年頃からの燃料革命や輸入材への転換によって手が入らなくなり、高齢化や大径化が進行している。林野庁は、放置状態の里山林は全国に約300~400万haあると推計している。
一方、国内の広葉樹材需要量は年間に2,400万m3ほどあるが、国産材の供給量は約250万m3と1割程度のシェアにとどまっている。輸入広葉樹材の約2割は製品用として利用されているのに対し、国産広葉樹材はチップや燃料用が大半で付加価値のつく製品に用いられているのは5%以下でしかない。

伐採・市況情報等を共有しマッチング、林政の「パラダイム転換」へ
国産広葉樹材は、量的にも質的にも利用が進んでいないのが実態だ。その一方で、最近は海外で高品質の広葉樹材を買い付けることが難しくなっており、家具業界などからは国産広葉樹材へのニーズが強まっている。また、環境保全やエシカル消費に関わる意識の高まりなどを背景に、虫害被害木など未利用の広葉樹材を活用しようとする草の根的な動きも出ている。
このような状況を踏まえて、「里山広葉樹利活用推進会議」は、里山広葉樹林を再生して新たな価値を創造する必要があると結論し、推進母体としてプラットフォームを新設する構想を示した。
プラットフォームには、①広葉樹林を伐採・再生する団体(地方公共団体、森林組合、林業経営者等)と、②広葉樹材の利用者(建築・内装・家具・楽器・伝統工芸関係者、きのこ生産者・種菌メーカー、薪炭製造業者、加工・流通業者)及び③賛同者などが参加し、伐採予定量や市況に関する情報を共有して、供給側と需要側の交流促進やビジネスマッチングを進める。将来的には、建築家やデザイナーなどからの相談受け付けや人材育成、広葉樹に関するデータベースの構築なども手がけることも視野に入れている。
戦後の林政は、建築用となる針葉樹材の安定供給を中心課題に据えて展開されてきた。林野庁主導で広葉樹材の利活用に踏み出すことは、「パラダイムの転換」(土屋座長)であり、「一旦途切れてしまったチェーンを回復する」(長崎屋圭太・林野庁森林整備部長)という従来にない取り組みになる。
その中核となるプラットフォームは、業界団体的な位置づけになるのか、あるいは全く新しい組織形態とするのか、今後の推移が注目される。
(2025年2月12日取材)

『林政ニュース』編集部
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