「多能工」を育成して現場作業を進化させる丸大県北農林【企業探訪】

「多能工」を育成して現場作業を進化させる丸大県北農林【企業探訪】

「多能工」──林業現場の担い手不足がなかなか解消されない中で、複数の異なる仕事を効率よく安全に遂行できる人材の育成が求められている。そのためには、従来からの業務内容を見直して、“人づくり”の支援体制を整備・拡充していかなければならない。簡単なことではないが、岩手県洋野町の(有)丸大県北農林(大粒来(おおつぶらい)仁孝社長)は、この多能工化に率先して取り組み、着実に実績を上げている。

充実した福利厚生とスキルアップ支援で社員の持ち味を活かす

丸大県北農林の社員数は28名で、内訳は技術職が23名、事務職が5名。20歳代から50歳代までが在籍し、平均年齢は34歳と若い。

技術職の多くは、造林、伐採、運搬をこなす多能工であり、事務職も豊富な現場経験を持っていて、必要なときには技術職をサポートできる。また、トラック等の運転手が臨機応変に伐採班に加わることもあり、柔軟な人材配置を実現している。

これを支えているのが社員の高い技術力であり、そのバックには充実した福利厚生と教育支援の仕組みがある。作業用具などはアウトドア総合メーカー・(株)モンベルの製品で統一してデザイン性を高めており、ヘルメットからブーツまで無償支給している。

また、社員のスキルアップ支援として資格取得費用などを全額会社が負担し、年に数回、様々な分野の外部講師を招いて研修会などを行っている。

各社員は毎月の業務目標を事務所のホワイトボードに掲げるほか、作業日報や月1回の振り返りなどを通じて、技術や安全などに関する考えを深めている。

大粒来仁孝・丸大県北農林社長

大粒来仁孝社長は、多能工を中心とした人材育成のポイントとして、「3か月やってみて少しでも上達すれば、時間はかかってもいずれものになる。社員それぞれの持ち味を活かせるように心がけている」と話す。

県内トップクラスの事業量、次代を視野にチップ生産も本格化

丸大県北農林の創業は、1977年。以降、造林、素材生産、支障木伐採などの事業を継続してきている。昨年度(2023年度)の事業実績は、素材生産が約4万7,000m3、地拵えが78ha、植林が78ha、下刈りが106ha、除間伐が23haと県内トップクラスを誇る。年間売上高は、約6億円に達している。

同社が拠点を置く洋野町周辺は、北海道のような緩やかな事業地が多く、高性能林業機械を導入しやすい。すでに、伐採機械ではPONSSE社の「ベアー」やコンラート社の「ハイランダー」、造林機械では筑水キャニコム社の「山もっとジョージ」やMDB社の「LVシリーズ」など最先端のマシンを使いこなしている。

これに加えて、今年(2025年)から高性能チッパーを新規導入し、チップの本格生産に乗り出す。年間約1万7,000tのチップを供給する計画だ。

職場見学や林業体験などの機会も数多くつくっている(画像提供:丸大県北農林)

一昨年(2023年)には、大粒来社長の子息である彰太氏が同社に入社し、次代を見据えた体制づくりにも着手している。

大粒来社長は今後の事業方針について、「チップ生産や再造林に注力しながら収益性を高め、社員のスキルアップや待遇改善につなげていく」と口にし、「若い世代の考えを取り入れながら次の森林をつくりたい」と目線を上げた。

(2024年12月24日取材)

(トップ画像=PONSSE社のハーベスタ「ベアー」(画像提供:丸大県北農林))

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。

この記事は有料記事(1330文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。