木材業界を代表する全国木材組合連合会(全木連、東京都千代田区)のトップが交代した。全木連(鈴木和雄会長)と全国木材協同組合連合会(全木協連、同、松原正和会長)は5月19日に東京都内で通常総会を開催し、役員を改選。2期4年にわたって全木連の会長をつとめてきた鈴木氏が退任し、後任の新会長に(株)スガノホールディングス(広島県広島市)の菅野康則社長(71歳)が就任した。全木協連の松原会長と両団体の副会長(兼専務理事)の本郷浩二氏(前林野庁長官)は再任された。議事では、所定の議案を原案どおり承認。全木連の2021年度決算は経常収益が約4億2,348万円、経常費用が約4億2,477万円で約134万円のマイナスとなった。
今年度(2022年度)事業計画では、ウッドファースト社会の実現に向けた消費者への普及活動や街づくりへの総合的な木材利用の推進など多角的な需要拡大運動を継続して展開することなどが承認された。全国の関係者が参集する第56回全国木材産業振興大会は、10月27日(木)に福島県郡山市で開催する。
菅野新会長「需給バランスをとり、木材自給率を高めていく」
全木連の会長を退いた鈴木氏は、在任4年間の成果として、都市の木造化推進法(改正木材利用促進法)の成立などをあげ、「木造・木質化された建物があたり前の時代になるよう努力してきた」と総括した。
この路線を引き継いで全木連の第13代会長となった菅野氏は、就任記者会見で、「世界の情勢が目まぐるしく変わっている。短期的には崩れている需給のバランスをとっていき、長期的には国内の森林資源をもっと活用して木材自給率を高めていく」との2つの対応方向を示した。また、「木質バイオマス発電が広がり輸入チップが増えている。住宅など従来からの木材利用とは別の需要が大きくなってきており、業界としてどう位置づけていくかが課題」とも指摘した。
菅野氏は、1951年に広島市で生まれ、1973年に松山商科大学経済学部を卒業後、曾祖父・金次郎氏が創業した菅野製材(株)(広島市)に入り、製材業の枠組みにとどまらない積極経営により業容を拡大してきた。現在はプレカット、住宅事業などを展開するスガノグループのトップとして広範なビジネスを指揮している。
「国産材と外材の垣根は徐々になくなってきている」、「国内工場の大型化と生産の効率化が進み、コスト的にも競争力が出てきた」、「木材流通はプレカットを出口としてコントロールできる」と語る菅野氏は、林業経営にも関心を寄せており、「少しずつ所有林を増やしている。山から住宅まで含めた6次産業化に取り組んでいきたい」と意欲をみせている。
(2022年5月19日取材)
(トップ画像=全木連会長に就任した菅野康則氏(中央)と全木協連会長の松原氏(右)、両会副会長の本郷氏(左))

『林政ニュース』編集部
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