織田央・林野庁長官に就任の抱負を聞く【インタビュー】

織田央・林野庁長官に就任の抱負を聞く【インタビュー】

6月28日付けで林野庁長官に就任した織田央氏(昭和63年入庁・東大林卒、59歳)は、7月11日に就任記者会見を行い、当面の課題や対応方針などについて語った。そのポイントをお伝えする。

「状況が急激に変わっている」、「自由な貿易の根幹が揺らぐ」

織田長官は、林野技官のエースとして、森林整備部長→国有林野部長→次長と歩みながら林野行政の屋台骨を支えてきた。順当に長官に昇格し、「昨年(2021年)改定した森林・林業基本計画に基づく政策を着実に実施していく」と淡々と語る。

ただし、「いろいろな状況が急激に変わってきている」とも述べ、「スピード感が求められる」との認識も示した。

とくに重視しているのは、ウッドショックやロシアのウクライナ侵攻などで、「木材輸入を巡る状況が非常に不安定になってきている」ことだ。急激な円安もあって、「今までのようにいつでも好きな量の木材を輸入することは難しくなっている」とし、「国際社会全体をみても、平和を前提とした自由な貿易という根幹がやや揺らぎ始めている」、「世界経済は非常に微妙なバランスの中で平衡状態を保っていたことに気づかされた」とも口にした。

輸入材リスクは「国産材にチャンス」、7団体宣言「画期的」

燃料や資材の価格が高騰し、政府全体で対策が検討されている。織田長官は、「木材は、他の燃料や資材と違って国内に資源がある」と述べ、「輸入材のリスクが認識されている中で、国産材に対する需要が急激に高まっている。これに応えてしっかり供給していくことが一番の課題。国産材にとってはチャンスでもある」と続けた。

国産材を安定供給する上でテーマにあげたのは、「サプライチェーン(供給網)の構築」。とくに、「伐った後には必ず植える。再造林も含めた供給体制をつくらなければならない」と強調した。

この点に関わって、「画期的であり、時宜を得たもの」と評価したのは、中央7団体が再造林可能な山元立木価格の実現を目指す「共同行動宣言2022」(第678号参照)に署名したこと。「この合意内容や考え方を各地域でも受け止めていって欲しい。林野庁が進める政策の方向性ともマッチしており、1つの突破口になる」と前向きな姿勢をみせた。

「持続可能なサプライチェーンを目指す」と話す織田長官

脱炭素化も「追い風」、「みんな同じ船に乗っている」意識で

国産材は、脱炭素化を担う材料としても注目されてきている。織田長官は、「これも追い風になっている」と率直に言う。林野庁の検討会が森林投資に関するガイドラインをまとめ、「森林×脱炭素チャレンジ2022」が初開催され、森林吸収に関わるJ-クレジット制度の見直しも行われる。「今まで森林・林業・木材産業にあまり関係のなかった方々が、森林整備や木材利用に関心を持つようになっている」、「森林や山村に“お金を落とす”ことを含めて、投資やカーボンオフセット、CSRなど様々な切り口で関わってもらいたい」と期待を寄せ、さらに「追い風をしっかりと受け止める対策も打っていかなければいけない」と語調を強めた。

「持続可能で合法性の担保された木材でないと使わないというのが世界的な流れ。(エンドユーザーである)住宅メーカーやビルダーも、そうした木材でないと使わない時代になってくる。それに先んじて準備を進め、サプライチェーンをつくっていく」ことを織田長官は重視する。サプライチェーンの構成員同士は、ときに利益が相反することもあるが、「国産材を使っていくという意味では、みんな同じ船に乗っている。そうした意識をベースに取り組みを進めていただきたい」と力を込めた。

(2022年7月11日取材)

(トップ画像=織田央・林野庁長官)

『林政ニュース』編集部

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