天然木曽檜の収穫量はピーク時の約15分の1、選木は厳しく
天然木曽檜の95%は、国有林から産出される(残り5%は社寺有林など)。管轄している中部森林管理局の資料で木曽谷における収穫量(伐出量)の推移をみると図のとおり。天然木曽檜の収穫量はピーク時の約15分の1まで減少している。量が減っているだけではない。木曽官材の原田浩幸・専務理事は、「昔と比べて品質も落ちてきている」と指摘する。その理由は、良質材が採れる林地からの伐採が一巡し、「標高が高く栄養不足や強風など条件の悪い林地から採っているから」だ。
2019年に社寺仏閣向けの「長さ14m、末口56cmの通直完満な天然木曽檜に1,900万円の値がついたこともある」が、今は高グレードの良質材をコンスタントに取り揃えることは難しい。その中で天然木曽檜のブランドを維持していくためには、“目利き力”が重要になる。「天然木曽檜と呼ばれるのは150年生以上の檜になる。その中でも最上級の緻密な木目を求めるには、200年生以上の年輪が重ねられた材になる」という厳しい選木を通じて、JAS規格に準じた木曽谷グレードでm3当たりB等級は25万円以上、4等級以上(A等級)では40万円以上をキープしている。
人工林の良質材をブランド化、70年後は天然木曽檜の代替に
天然木曽檜に代わって存在感を増しているのが、「高国(マルコウマルコク)木曽ひのき」だ。
「高国木曽ひのき」は、人工林から産出された80年生以上の良質ヒノキをブランド化したもの。木目の緻密さや曲がりなどの厳しい選別基準を設定しており、年間生産量は約2万~3万m3、平均価格はm3当たり2万円台半ばとなっている。
原田専務によると、「高国木曽ひのき」は年々品質が向上しており、中には7万円と天然木曽檜に近い値がつくものも出てきている。「あと70年くらいすれば天然木曽檜の代替材に十分なり得る」という状況だ。
原木市と製品市を定期開催、信頼に支えられた「木曽の市売」
24名の組合員からなる木曽官材は、年間47回の原木定例市に加え特市も開催するとともに、製品市も月1回ペースで行っている。近年の平均的な年間取扱量は、原木が約13万m3、製品が約1万m3、売上ベースでは原木が約25億円、製品が約2億3,000万円。
昨年度(2020年度)はコロナ禍の影響で取扱量、売上ともに25%ほど落ち込んだが、「実質的な業務への影響は少なかった」という。1956年の設立から65年目を迎えた木曽官材は、これまでも時代の荒波を乗り越えてきた。今後も信頼に支えられた「木曽の市売」として、良質材を世に送り出していくことにしている。
(トップ画像=木曽官材市売協同組合の原木土場)
『林政ニュース』編集部
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