古里木材物流は、2011年の創業後、継続的な設備投資を行って事業量を拡大し、現在では年間12万m3以上の丸太(原木)を運送している。また、素材生産とチップ生産も手がけているほか、今年(2023年)7月からはジョイントベンチャー(JV、共同事業体)方式で木質バイオマス発電所の新設プロジェクトを進めている。
6か所の中間土場を拠点に月間1万m3以上の丸太を安定供
古里木材物流の畠山社長に、「物流の2024年問題」への対応策を聞くと、「中間拠点を整備・確保していくことが重要」との答えが返ってきた。
同社の事業エリアである岩手県には、大型の合板工場やバイオマス発電所が数多く立地している。これらの大口顧客に対し、同社はノースジャパン素材流通協同組合(盛岡市)と連携しながら、山元から工場へ丸太を直送している。
同社の強みは、月間1万m3以上の丸太をコンスタントに取り扱えることだ。その拠点となっているのが、盛岡市周辺に整備している6か所のストックヤード(中間土場)。各ストックヤードには、仕分け済みの丸太やチップ材が常備されており、合板工場やバイオマス発電所からの注文に即応できる体制が整えられている。
盛岡市内から大型合板工場が立ち並ぶ石巻市までトラックで走ると、休憩を入れて往復約7時間かかる。この途中にストックヤードを設けることで仮置きができ、ドライバーの交代も含めた柔軟な運送体制を敷くことができる。
畠山社長は、「最も重要なのは、ドライバーの就労条件や収入を向上させて、魅力的な職場にしていくこと」と述べ、「労働時間が短縮されれば、運送量が減る。それに備えて、短時間で運送量を増やせる工夫が必要になる」と明確に言う。
全産業平均を上回る就労条件目指し、工夫を重ね収益力高める
トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均より約2割長く、年間所得額は約1割低い(図参照)。その中で古里木材物流は、年間労働時間を全産業平均に近づけ、年間所得額は約1割高い水準を維持している。
平均以上の給与を払い続けるためには、“稼ぐ力”を高めていかなければならない。同社は、運送業に加えて素材生産やチップ生産なども行うことで収益力を向上させ、作業の効率化と負担軽減のため、ヒアブ製のハイビジョンを搭載したトレーラーやマイヤーメルンホフ製のタワーヤーダー「ワンダーファルコン」などの最新機械を揃えている。とくに、畠山社長は、「移動式チッパーが生産性のアップに大きく貢献している」と言う。同社は8年前に、移動式チッパーで林地残材をチップ化してバイオマス発電所へ納入する事業を開始。これが軌道に乗り、4年前に2台目を導入。「2か所でチップ材生産が行えるようになり、『行き便』と『帰り便』でムダなく運送できるようになった」という。
バイオ発電事業にも参入、自社で“出口”を持ち雇用を安定化
コロナ禍やウッドショックを経て、古里木材物流を取り巻く事業環境は大きく変化してきた。畠山社長は、「運送会社間で荷物の獲り合いが起こり、赤字覚悟の受注もみられた」と話す。転換期の中で留意しているのは、「事業量が確保できないと、ドライバーの所得が減り、他産業に転職するケースも起こり得る」ことであり、「自分達の『荷物(仕事)』は自分達でつくるしかない」と強調する。
同社は昨年(2022年)5月、稲畑産業(株)(大阪府大阪市)、中部電力(株)(愛知県名古屋市)とともに古里FICエネルギー合同会社(盛岡市)を設立、今年7月に矢巾町内で木質バイオマス発電所の建設に着手した。2026年1月に稼働を始める予定だ。
新設する発電所への燃料チップ供給も、当然のことながら同社が担う。畠山社長は、「自社で“出口”を持つことで、物流も雇用も安定し、林業振興にもつながる」と見定めている。
(2023年7月20日取材)
(トップ画像=古里木材物流の作業現場、移動式チッパーが活躍している)
『林政ニュース』編集部
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