“スギの二宮”がヒノキ土台も、木割書の部材すべてが揃う
二宮木材の看板商品といえば、スギの平角(商品名「やみぞパワー」)。その品質の高さと品揃えの豊富さは、業界ではつとに有名だ。だが今、同社の第1工場内では、ヒノキ土台などを挽けるツインバンドソーの設置準備が進んでいる。昨年6月に同社の第5代社長に就任した二ノ宮泰爾氏(40歳)は、「平角だけでなく、土台まで一緒に納めてほしいという要望が多いので」と、その理由を語る。
同社は、常時1万丁を超える平角の半製品を在庫しており、注文が入ると直ちに加工し邸別出荷できる体制を整えている。そのデリバリー機能の高さゆえ、顧客から“あれもこれも”という注文が増えているのだ。すでに、平角と並ぶ人気商品の超仕上げ加工板(商品名「やみぞ美人」)をはじめ、柱、間柱、垂木、母屋桁、胴縁、鴨居、廻り縁なども生産しており、“スギに関してはあらゆる注文に応じられる”工場になっているが、新しいツインバンドソーが動き出せば、「木割書に指定している部材がすべて揃う」(二ノ宮社長)ようになり、顧客からすると、ワンストップサービス型の工場になる。
5年続けて増収増益、売り上げ単価も平均以上で推移
ヒノキ土台など商品アイテムが増えると、益々ストック機能が重要になってくる。このため、150坪の木造倉庫を3棟新築する工事も併行して行っている。
同社が約1万坪の敷地を購入して第1工場を開設したのは、平成21年のこと。それ以降、生産能力の増強に向けた設備投資が絶え間なく続いている。これを可能にしているのが、好調な業績だ。泰爾社長の実父であり前社長の二ノ宮英寿会長(68歳)は、「私が平成3年に社長になってから、赤字決算は一度もない」と自負を口にする。しかも、「ここ5年は増収増益できている」。
同社では現在、第1・第2工場(旧本社工場)で56人の社員が働いており、協力工場を含めた原木消費量は月5,000m3弱となっている。これ自体は飛び抜けたボリュームではないが、「平均の売り上げ単価は普通の製材工場を上回る水準が続いている」という利益率の高さは際立っている。
バイオマス発電は“脇役”、身の丈を見極め投資続ける
同社は昨年6月から、製材端材を燃料にしたバイオマス発電を行っている。FITの認定を受け、東京電力にkW当たり24円で売電しており、全国的にも先駆的な取り組みだ。ただし、出力規模は265kWとこじんまりしており、自家消費分もあるので、「売電量としては200kWが最高」「まだ月当たりの売電額は100万円弱」(二ノ宮社長)という段階だ。
もっとも、同社にとって発電はあくまでも“脇役”にすぎない。“主役”は木材乾燥であり、そこで余った蒸気を使って発電機を回すという現実路線をとっている。
同社の経営の根幹にあるのは、“付加価値の追求”だ。製材も発電も、いたずらに量を追うことはせず、身の丈にあった事業規模を見極めながら、必要な投資は怠らない。この実直な立ち位置を守り続けているところに、同社の最大の強みがある。
(トップ画像=2013年6月から稼働しているバイオマス発電施設)
『林政ニュース』編集部
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