木曽漆器と香川漆器に大臣賞、“産地力”の桂宮賞に越前漆器
「全国漆器展」は、日本漆器協同組合連合会(中央区)、日本漆工協会(同)、伝統的工芸品産業振興協会(港区)が主催し、1967年から毎年実施している。今回は14産地が自慢の逸品を出品して漆器の可能性を示し、優秀作品の選定・表彰も行った。
伝統的な技法を競う美術工芸品部門では、木曽漆器工業協同組合(長野県塩尻市)の「漆皮 朱塗縁金線楢紋様皿 朱塗縁金線梅型小皿5枚組」が農林水産大臣賞(最優秀賞)に輝いた。皮に漆を塗る「漆皮」という技法でつくられた皿で、「皮の柔らかな曲線を花に見立てた造形と細かな細工のセンス」(審査講評)が高く評価された。
市場性を重視する産業工芸品部門では、一和堂工芸(株)(香川県高松市)の「香川漆器 漆下駄 『Siccok』」が経済産業大臣賞(同)に選ばれた。香川県独自の手法である象谷塗を同じく同県の伝統工芸品である下駄に施したもので、「漆器と下駄という日本文化の合わせ技で、海外市場への勝負に出られる可能性がある」(同)と見込まれた。
産地の“総合力”を審査する団体部門では、越前漆器協同組合(福井県鯖江市)が桂宮賞(同)を受賞した。同協同組合は、「事前審査を行って実力のある商品を出品し、3年連続で桂宮賞を獲得している」実績に加えて、「各産地の中でとくに市場動向に寄り添っている」(同)ことが評価ポイントとなった。
3点に初の「めしまり」賞、海外で「JAPANNEDWARE」普及
「全国漆器展」は、今回から特別テーマ部門を新設した。設定テーマは毎年変わる予定で、第1回は「めしまり」。日本漆器協同組合連合会は、一昨年(2021年)から11月10日を「漆塗りのお椀でご飯をいただく記念日」(通称:めしまりの日)に制定し、和食文化と漆器の魅力を発信している。栄えある初の「めしまり」賞(同連合会理事長賞)には、(有)伊藤寛司商店(塩尻市)の「和塗木地呂飯椀・箸・箸置き・汁椀」、梶原漆器店(石川県輪島市)の「夫婦椀 魯山人型」、中門漆器店(輪島市)の「福寿椀 パールロゼ」の3点が選ばれた。
「全国漆器展」の会期中、会場には途切れることなく来客があった。同連合会の春原政則事務局長は、最近のニーズについて、「インバウンド(訪日外国人観光客)の需要が高まっている」と指摘し、販路拡大に向けて外国市場にも積極的に打って出たい」と話す。
海外で日本の漆器は「lacquerware(ラッカーウェア)」としか表記されておらず、外国産の漆器と一括りになっている。そこで同連合会では、高品質な日本の漆器をPRするブランド「JAPANNEDWARE(ジャパンドウェア)」の普及を進めている。春原事務局長は、「日本の漆器の良さが伝わるブランドとして育てていきたい」との方向性を示している。
(2023年9月15日取材)
(トップ画像=農林水産大臣賞(右)と経済産業大臣賞の受賞作品)
『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。