ヒノキ土台・柱を年1万3,000m3生産、「直材しか仕入れない」
マルハチの主力製品はヒノキの土台と柱で、年間約1万3,000m3を生産している。機械等級区分構造用製材のJAS(日本農林規格)認定を取得しており、製品のサイズは10.5cm角で長さは3〜4m、強度はE90以上、含水率は15%以下で揃っている。
同社は、原料となる丸太(原木)を地元・栃木県のほか、茨城県、福島県から調達している。購入する際の基本方針は、直材の丸太をできるだけ高く仕入れ、品質の確かな製品に加工して販売することだ。ウッドショックの反動で木材市況が冷え込んでも、同社の製品だけは順調な出荷を続けており、渡邊久男社長(60歳)のもとには、「価格は高くても製品の持ちがよく、使い勝手もいいので重宝している」との声が届いている。
渡邊社長は、「直材を仕入れるメリットは2つある」と指摘する。1つは、「製品の寸法精度が高く顧客が使いやすいこと」。もう1つは、「製品生産時に挽き直しが発生しづらく、木取りが自動化しやすいこと」。だから、「直材しか仕入れない」と明言する。その言葉の通り、同社の土場を歩くと、ストックされている丸太は直材ばかりで、少しでも曲がっている丸太があると浮き上がって見えるほどだ。
役物から構造材に転換、2年前に生産ライン刷新し自動化図る
マルハチの創業は1956年。1990年に法人化したときに、矢板市内にあった工場を現在の場所に移転した。日本を代表する国産材製材企業・(株)トーセンの本社とは国道4号線を挟んで車で約5分の至近距離にあるが、「(トーセンとは)経営スタイルが異なるから共存できている」と渡邊社長は事も無げに言う。
創業当初は国有林から伐出されたヒノキを使って役物を中心に製材していたが、建築スタイルが真壁工法から大壁工法に移り変わるのを捉えて構造材中心の生産ラインに切り替えた。
その過程でスギも取り扱うようになり、工場移転時はスギが約7割、ヒノキが約3割の比率だった。しかし、木材価格が低迷し、単価が低いスギでは生産設備に限りがあり、売上維持のためほぼヒノキだけの生産ラインにシフトしてきた。
同社の生産ラインは、ノーマンの製材機とワンマンの丸鋸ツインバンドソ-、自動桟積み機、人工乾燥機、モルダーなどで構成されており、社員10名でオペレーションしている。丸太の皮剥きから製材、製品の乾燥に至る動線がムダなくレイアウトされており、フォークリフトの動きも最小限に抑えられている。この環境の中で、作業員は機械のメンテナンスや製品の確認などに集中できるようになっている。
同社が生産ラインの刷新に取り組んだのは2年前。それまでは帯鋸の製材機など複数台の加工機で生産していたが、渡邊社長の子息である渡邊尚喜専務取締役(34歳)が「工場の自動化」を主導した。
木だけでなく機械を見る目も養う、用地を取得し増産も視野に
一般的に、製材企業の後継者は、木材商社や材木屋などで修行することが多い。だが、渡邊専務は、木材加工機の販売代理店で5年間修行した。
その理由について、渡邊専務は、「木を見る目だけでなく機械を見る目も養った方がコスト削減につながるからだ」と話す。製材機や丸鋸機などが1か所でも故障すれば、工場全体がストップする。自分達で修理できなければ、メーカーや販売代理店に依頼するしかなく、1回当たり数十万円以上の費用がかかって経営コストを圧迫する。渡邊専務は、3年間の修業時代に全国の製材工場を回り、最新の製材機や丸鋸機などの設置や修理などに携わってきた。
刷新した生産ラインのポイントを渡邊専務に聞くと、「既存の長さ56mの製材棟にノーマン製材機と丸鋸製材機の2台を入れたことだ」と即座に答えが返ってきた。建物の高さや長さ、幅、柱の位置など様々な制約がある中で、修業時代に培った工場やライン設計のノウハウを活かし、不要なスペースや動線が生まれないように機械の配置などを工夫したという。
同社は、生産ラインの刷新に合わせて工場周辺の用地を取得し、整備を進めている。今年(2023年)に入ってからは、物林(株)(東京都江東区)との協定取引を開始し、1年間固定価格でヒノキ製品を販売するなどの新しい取り組みも始めている。 渡邊専務は、「製材機の生産能力には余力があり、新たに取得した用地に人工乾燥機を導入すれば生産量も増やせるが、その前に製品の出口を増やすことが大事だ。当面は今のビジネスを続けながら、増産の機会を窺っていきたい」と今後を展望している。
(2023年4月20日取材)
(トップ画像=マルハチのノーマン製材機)
『林政ニュース』編集部
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