フローリングの国産材化を先導する朝日ウッドテック【突撃レポート】

大阪府 家具・木工品等製造業

フローリング(木質系床材)のトップメーカーである朝日ウッドテック(株)(大阪市中央区、海堀直樹・代表取締役社長)が国産材の利用を推進している。大正時代の1913年に銘木商「霜寅商店」として産声を上げた同社は、1世紀を超える社歴の中で、絶えざる事業変革と製品開発を重ねて時代のニーズに応え続けてきた。そして今、国産材を活かし、山(森林)とのつながりを太くすることで“次の1世紀”を切り拓こうとしている。そこには、どのようなビジョンがあるのか――。

「銘木の大衆化」という理念継承、「新規開発は社是」を実践

朝日ウッドテックは今年(2025年)4月、経営陣を刷新した。2016年6月から代表取締役社長をつとめてきた海堀哲也氏(64歳)が取締役副会長となり、専務取締役営業本部長の海堀直樹氏(40歳)が社長に昇格。前々社長の海堀芳樹氏(71歳)が代表取締役会長を担い、創業家で中核を固めながら世代交代を進めていく姿勢を内外に示した。

海堀哲也・朝日ウッドテック取締役副会長

直樹氏に経営トップのバトンを渡した海堀副会長は、創業時から受け継ぐ「銘木の大衆化」という理念をベースに、新規需要の開拓などに取り組んできた。その根底には、「新規開発は社是。新しいものを世の中に出して切り拓いて行く。これが初代(海堀寅造氏)から続く教え」という確固とした信念がある。その一環として、国産材を使った製品を世に送り出してきた。

基材に国産の針葉樹合板を活用、「適所適材」で最適製品を提供

日本国内で使われているフローリングは、ムク(無垢)フローリング(シェア約10%)と複合フローリング(同約90%)に分かれる。

マーケットの大半を占める複合フローリングは、基材と表面化粧材で構成される。基材には、南洋材合板、国産の針葉樹合板、MDF(中質繊維版)、PB(パーティクルボード)などが使われる。

表面化粧材には、印刷シートと天然木が用いられ、印刷シートが年々シェアを高めて2024年時点では77%にまで上昇している。一方の天然木には、()き板(厚み0.2~0.5mm)と()き板(同2~3mm)が使われている。

これらのうち、国産材利用の対象となるのは、針葉樹合板と天然木化粧の突き板及び挽き板だ。

朝日ウッドテックは、国(林野庁)からの要請なども踏まえて、基材に国産の針葉樹合板を用いる取り組みを2008年頃から行ってきた。海堀副会長は、こう振り返る。「針葉樹合板を基材に使うにあたって、床暖房への対応がネックだったが、MDFと組み合わせることでクリアできた」。海堀副会長が社長に就いた2016年時点の同社における針葉樹合板+MDFの割合は、基材全体の16%程度だったが、現在は約40%にまで伸びている。

「基材は大きな変化をとげている」と話す海堀副会長は、今後の事業方針を次のように描いている。「MDF+針葉樹合板だけでなく、価格の安いMDF+ファルカタ合板もここ7~8年で普及し、使い分けるようになってきた。PBも、厚さ24㎜の国産針葉樹合板を根太レス床板として貼るようになったために、基材として使えるようになった。基材に関しては脱南洋材という傾向がはっきりしており、ユーザーからは持続可能性を証明できない商品は使用できないと言われている。適材適所という言葉があるが、当社では『適所適材』という考え方で、使用環境や条件を踏まえた最適の製品を提供していきたい。その中で、国産材には大きな可能性がある」。

東北地方の広葉樹を表面化粧材に使い、節有材で新製品を開発

朝日ウッドテックは、基材とともに表面化粧材の国産材化にも注力してきている。きっかけとなったのは、ある大手ハウスメーカーから「(東日本大震災で被災した)東北の復興に協力して欲しい」と依頼されたこと。調べてみると、東北地方にはフローリングの表面化粧材に好まれるナラだけでなく、ヤマザクラ、オニグルミ、クリ、センなどの広葉樹があることがわかった。これらを表面化粧材の挽き板に有効利用したフローリングを製品化すると、好評を得た。

すると、社内から節有材(ふしありざい)を使った製品もつくりたいという提案が出てきた。それができれば、小径木も利活用できる。「さっそく製品化し、『ラスティック』という名前で販売したところ、人気商品に成長することになった」(海堀副会長)。こうした取り組みにより、ほぼチップになっていた国産広葉樹の付加価値を高めてきた。

国産広葉樹の節有材などを活用した「ラスティック」(画像提供:朝日ウッドテック)

課題は量の確保、産地と連携して循環的ビジネスの構築目指す

朝日ウッドテックの国産材利用は、ここまで順調に進んできた。ただ、問題がないわけではない。それは量(ボリューム)の確保だ。

「ハウスメーカーから月に10棟分のフローリングが欲しいと言われると、製材品段階で約10m3、原木段階で40m3が必要になる。これを月100棟に増やそうとしたら、現状ではとても集められない」──こう口にする海堀副会長は、林野庁が設置した「里山広葉樹利活用推進会議」に委員として参画し、情報共有や需給マッチングの重要性を訴えてきた。

「当社が原木集荷から製品製造まですべてを行うのではなく、産地で製材や乾燥まで行っていただき、ある程度の量がまとまれば当社のようメなーカーが引き取りに行くという仕組みが全国にできるといい」と言う海堀副会長は、「国産材、とくに広葉樹の需要が増えていけば、必然的にマーケットでの価格が上がり、山元への利益還元が増えて循環的ビジネスが回るようになる」と先を見据えている。

(2025年6月24日取材)

(トップ画像=基材から表面化粧材(挽き板)までオール国産材の「ライブナチュラルプレミアム」、画像提供:朝日ウッドテック)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早くも31年目! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。

この記事は有料記事(2349文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。