政府は、最新版となる2024(令和6)年度の『森林・林業白書』を6月3日の閣議で決定し、公表した。特集では「生物多様性を高める林業経営と木材利用」をテーマに掲げ、『白書』としては初めて「生物多様性」を巡る課題や対応策を取り上げた。
生物多様性の確保は、1992年の地球サミットで採択された生物多様性条約によって国際的な共通目標となり、2022年の同条約第15回締約国会議で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」によってネイチャーポジティブ(自然再興)の考え方や、陸と海の少なくとも30%は保護地域にする「30by30目標」の達成が打ち出された*1。
こうした流れを受けて、大手企業などは、2017年の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」や2023年の「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」による提言等を踏まえた取り組みを進めている。林野庁も国有林野を使ってOECM(保護地域以外で生物多様性に資する地域)の設定に協力する方針をとっており、昨年(2024年)3月には「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」*2を策定し、生態系などに配慮した森林施業の実践を促している。
「指針」に沿った持続的林業経営で収益機会の確保へ
『白書』は、日本の森林は諸外国と比べても豊かな生物多様性を形成しているとした上で、「指針」に即した森林施業を行うことで、新たな収益機会が得られると解説。大手デベロッパーの野村不動産ホールディングス(株)が東京都奥多摩町と連携して実施している脱炭素化や生物多様性保全に寄与するプロジェクト*3などを紹介し、「生物多様性を高める林業経営と、持続可能な木材利用の実践を通じて、我が国の森林を将来にわたり受け継いでいくことが必要」と結論している。
担当の林野庁企画課年次報告班の話「生物多様性というと敷居の高いテーマと受け止められがちなので、『白書』には具体的な取り組み事例を数多く収録した。是非多くの方に読んでいただきたい」
(2025年6月3日取材)

『林政ニュース』編集部
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