20年に一度の伝統行事「御杣始祭」を長野県上松町で行う

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20年に一度行われる伊勢神宮(三重県伊勢市)の「式年遷宮」に向けたキックオフイベントとなる「御杣始祭(みそまはじめさい)」が6月3日に長野県上松町内の国有林で開かれた。6月5日には、岐阜県中津川市内の国有林で「裏木曽御用材伐採式」も行われ、2033(令和15)年に完成予定の新社殿に使われる優良材の供給事業がスタートした。

2033年の「式年遷宮」に向け優良材供給事業がスタート

式年遷宮は、伊勢神宮の内宮や外宮の社殿を建て直してご神体を新しい社殿に移す伝統行事。1300年前の第41代持統天皇の時代に始まってから現在まで絶えることなく継承されており、今回で63回目となる。

御杣始祭は、天皇陛下によって定められた「御杣山(みそまやま)」で、御神体を納める「御樋代(みひしろ)」と呼ばれる器に用いる御神木のある(木曽ヒノキ)を伐採する行事。

今回は、高さ26m、直径60cm余、推定樹齢300年の木曽ヒノキ2本を、伊勢神宮祭主の黒田清子さんや各界の関係者らが見守る中で伐採した。

古来から伝わる「三ツ紐伐り」で御神木に斧を入れる

御神木の選木にあたっては、①南面に生育したもので近くに小川が流れるなど清浄に保たれた場所の木であること、②長さが4~5mで末口径46㎝の採材が可能な節の少ない立木2本であること、③2本を伐り倒したときに(たすき)掛けに重なる距離にあること──を条件とした。

伝統技法の「三ツ紐伐り」により狙い通りに伐採、安全で確実な作業

御神木の伐採は、「(み)(ひも)(ぎ)り((お)り)」と呼ばれる伝統的な技法で行われた。

この技法では、3つの方向から斧によって木の中心に達するまで孔を空けていく。孔がつながると空洞となり、立木は外周部に残された3本の(つる)(支柱)で支えられている状態となる。この弦を徐々に細くしていき、最後に伐倒方向とは反対にある弦を斧で伐り放すと木が倒れ始める。同時に、他の2本の弦も斧で素早く伐って伐採作業を完了させる。この技法によって、伐倒方向が確実になり、材の割れなど損傷も避けられ、安全・確実に作業が行えるメリットがある。

地元の林業関係者は、「三ツ紐伐り保存会」を組織して伝統的技法の継承に努めており、今回も同保存会の「杣人(そまびと)」が純白の作業着を身に着けて作業にあたり、狙い通りの方向に2本の御神木を伐り倒した。

狙い通りの方向に御神木を伐り倒した

降りしきる雨の中、約80人の報道陣が8時間余をかけ忍苦の取材

御杣始祭の当日は、朝から雨。その中で、約80人の報道関係者が午前6時過ぎに現地入りし、7時前には取材スペースでの陣取りなどを終えた。ただし、雨よけの天幕などはなく、10時の式典開始まで、降りしきる雨の中でひたすら待つのみ。

式典が始まってからも雨足は弱まらず、ときに強くなり、気温も下がった。小刻みに震えながらカメラを構える取材者もいた。

雨に打たれながらの取材が続いた

それでも11時半過ぎに「三ツ紐伐り」がスタートすると、空気が変わった。「杣人」は、雨に打たれながらも着実に斧を入れていく。1時間余をかけたハイライトの伐倒時には、参列者の間から歓声が上がり、報道関係者の間からも感嘆と安堵の声が漏れた。

式典が終了し、機材などを手にした報道関係者が下山したのは午後2時過ぎ。都合8時間余に及ぶロングランの雨中の取材となったが、20年に一度の貴重な機会だったこともあり、不平や不満は聞かれなかった。

(2025年6月3日取材)

『林政ニュース』編集部

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