滋賀県の2造林公社が特定調停案に合意

約1,126億円の巨額債務を抱えている滋賀県の「県造林公社」(理事長=嘉田由紀子・県知事)と「びわ湖造林公社」(理事長=西堀末治・前県教育長)が、裁判所の仲介により債務の削減を図る特定調停を申し立てていた問題の結論が出た。県は1月20日、大阪府など下流8団体と県が「県造林公社」の債権の82%にあたる約323億円を、また「びわ湖造林公社」については県が債権の83%、約613億円を放棄する特定調停案に合意したと発表した。2公社をあわせた債権放棄額は約937億円になる。特定調停は、各自治体・団体の議会で関連議案が可決されて成立する。

県と下流団体が約937億円を債権放棄

全国に39ある林業公社(森林整備法人)の債務総額は約1兆円に膨らんでいる。とくに、滋賀県の2公社が抱える債務は合計額で全国最大。その解決策を全国で初めて特定調停に委ね*1、これまでに個別交渉を含めて3年2か月を費やしてきたが、結論は債権放棄という苦渋の選択となった。

1月20日に記者会見した嘉田知事は「財政難の時代に巨額の債権放棄をせねばならず申し訳ない。下流の協力も得て、将来につけを残さず、早期に処理すべきだと判断した」と説明する一方で、分収方式と農林漁業金融公庫からの借入金で造林事業を推進した国(林野庁)に対して、「責任を自覚してもらいたい」と批判した。

残額は伐採収益で返済、下流7団体は“一括精算”

債権放棄をした残額については、公社の伐採収益で分割返済することになる。ただし、兵庫県を除く下流7団体は5月20日を期限とする一括返済を求めているため、滋賀県は返済に必要な計14億円を公社に無利子で貸し付ける“立て替え払い”の手法をとる。一括返済により、下流7団体の債権放棄率は82.2%から91.5%に高まるが、ここで“精算”をする道を選んだ。

今後、伐採収益を目論見どおり確保できるかは、材価次第の面もあるが、路網整備や林業機械化などを進めて伐出等のコストダウンを図り、収益性を高める努力が欠かせない。嘉田知事は「県民の負担を少しでも減らせるようにすることが責務」と明言しており、林業再生に向けたビジネスモデルの再構築が問われている。

(2011年1月20日取材)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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