滋賀県内人工林の約4分の1を造成してきた「県造林公社」(大津市、理事長=三日月大造知事)について、10年後をメドに事業を廃止し、解散する方針が打ち出された。同県が設置している「分収造林事業あり方検討委員会」が5月13日に開いた会合で解散案が示された。8月頃に同検討会での議論を集約し、今年度(2025年度)中に県が最終的な結論を出すことにしている。
経済林は主伐・再造林を推進、環境林は公的管理
同検討会は、昨年(2024年)9月から議論を重ね、①分収造林事業、②公社組織、③今後の森林整備のあり方──について今後の対応策を次のようにまとめた。
①分収造林事業…現在抱えている188億円の債務弁済は実質的に不可能であり、5~10年をかけて森林所有者との契約を解除して事業を廃止する。
②公社組織…分収造林事業を廃止次第、解散する。事業収束までの団体存続に必要な県からの支援は継続する(毎年2億円程度)。
③今後の森林整備のあり方…公社林を森林所有者へ返還した後、経済林は森林組合が中心となって主伐・再造林を推進する。環境林は森林環境譲与税や琵琶湖森林づくり県民税を財源にして、県と市町が連携して公的管理する。
以前は2公社で造林推進、全国初の特定調停で債権放棄したが…
かつて滋賀県には、1965年設立の「県造林公社」と、1974年に発足した「びわ湖造林公社」があり、分収造林特別措置法に基づく拡大造林などを推進してきた。
しかし、木材価格の低迷などによって2公社の経営状況は悪化し、債務総額が1,000億円を上回るようになり、2007年には裁判所の仲介によって債務の削減を図る特定調停を全国の林業公社では初めて申し立てた。
その後、2011年に特定調停の結論が出て、大阪府などの下流域8団体と県が「県造林公社」の債権の82.7%(約323億円)を、県が「びわ湖造林公社」の債権の83.6%(約614億円)を放棄することで合意した。
巨額の債務問題に一旦ケリをつけた2公社は、2012年に「県造林公社」が「びわ湖造林公社」吸収するかたちで合併し、翌年から現体制で森林整備を進め、J-クレジットの創出など新規事業にも取り組んできた。だが、根本的な収益改善には至らず、ここで解散案が示された。「県造林公社」の経営行き詰まりは、分収造林事業というスキーム自体が時代にそぐわなくなっていることを示唆している。
(2025年5月13日取材)
(トップ画像=分収造林事業廃止後の森林整備のあり方(イメージ))

『林政ニュース』編集部
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